最後のユニコーン

ピーター・S・ビーグル 早川文庫FT

「もう、わたしは仲間たちと同じではないのです。

後悔する事が出来るユニコーンなど、生まれた

事は無いのですから。

でも、わたしは後悔する事が出来るのです」

byユニコーン


タンポポの毛のようなたてがみと、貝殻色に光る角を持つ、

この世で最も美しい生き物ユニコーン。

しかし彼らはいつの間にか、世界中から姿を消してしまった・・・。

この世にただ一人残った雌のユニコーンは、おしゃべりな蝶々の残した

謎の言葉「赤い牡牛」を手がかりに、いずこともなく消え去った仲間たちを求めて旅に出る。

道化に身をやつした魔法使いシュメンドリック、

山賊女のモリーといった人々と出会いながら旅を続ける彼女は、

やがて自らが純粋なユニコーンに戻れなくなるかもしれぬ試練に直面する・・・。

寡筆の天才ビーグルの代表作にして、

「これとル・グィンの『ゲド戦記』を読めば、60年代以降のモダン・ファンタジーの

ほとんどを理解できる(by風間賢二、『ユニコーン・ソナタ』解説)」とまで

呼ばれる作品。

ビーグル作品の特徴は、作者自身のアイロニーに満ちたどこかシニカルな感性と、

それを上手く相殺する透明感溢れるリリカルな文体で、

舞台台詞めいた独特の台詞まわしを含めて、

彼の諸著を他の作家とは一線を隔する一種独特なものにしています。

現代ともロビンフットの時代ともつかない不可思議な世界で展開される物語は、

幻想味溢れる前半の展開を経て

魔術師シュメンドリックの自分探しの旅へと帰結していきます。

純然たる冒険ファンタジーを期待して読むと少し肩透かしを食わされるかもしれませんが、

純文学としても通用する程に透徹した丁寧で説得力溢れる人間描写は、

一気に没頭して読みきってしまうのに充分な魅力をもっています。

60年に僅か19歳で現代ファンタジーの傑作『心地よく秘密めいたところ』

を発表して電撃的なデビューを飾ったビーグルが、

およそ10年の充電期間を経て発表したのがこの『ユニコーン』で、

アメリカの60年代カウンターカルチャーの隆盛による『指輪物語』の再評価と、

それに端を発するファンタジーブームの中で、

主に青年層を中心に非常に高い評価を受け、半ば伝説の作品となりました。

アメリカのモダン・ファンタジーの歴史を語る上では欠かす事の出来ない作品ですし、

読んで損は無いと断言できる名作です。

 

著者ビーグルはテレビのシナリオライターやクラシックミュージシャンなどとしても

活躍する人物で、

一方で作家としては自作に妥協を許さないために非常に寡作です。

(40年に及ぶ作家生活で出版された作品が5,6作程度というのは、

商業作家としては驚くべき数字です・・・いろいろな意味で(^^))

最近ではやはりユニコーンを素材としてターゲットを幼年層に絞った

『ユニコーン・ソナタ』を発表し、

日本でも邦訳版が刊行されています(早川書房、ハードカバー)。

 

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